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「――はあっ、はあっ、はあっ……！」

　気が付くと、朝倉純一は息を切らしながら走っていた。
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「はあ、はあっ……、ここは、どこだッ？」

　弾んだ息のまま周りを見渡す。

　見慣れない、無機質なビルと鉛色の空に囲まれた街並み。
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　この不気味な風景は、走っても走っても、まるでスクロー
ルゲームのように続いていく。

「つーか、なんで俺は走ってるんだ」

　何かから逃げているのだが、どうして逃げているのかわ
からない。
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「くそっ、なんでこんなかったるいことを……」

　純一が悪態をついていると、どこから出てきたのか、あ
からさまにゾンビにしか見えないアンデットたちがわんさ
かと現れる。
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「うわっ、なんだってんだよッ？！」

　アメフト選手ばりのカットバックでターンを決めると、
純一は反対方向に走りだす。
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　しかし、別の方向に逃げても、逃げてもゾンビの群れ。

「ヤバい、行き止まりか……」

　あてもなく逃げているうちに、純一は袋小路に行き当たっ
てしまう。
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「ん？　あれは……」

　囲まれて、追い詰められる中、純一の視界に学生服を着
たゾンビが映る。
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　よく見れば、風見学園の制服のようなものを着ている、
女性とおぼしきゾンビも混じっている。

「ウソだろ？　まさか……！」
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　――もしかして、自分と親しい人たちもゾンビと化して
いるのでは？

　そんな考えが、一瞬純一の頭をよぎる。
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　随分と飛躍した考えだが、目の前の光景から可能性は小
さくない。

　妹や、仲の良い友人たちの顔が脳裏にチラつく。

　しかし、柄にもなく思考を巡らせた一隙は、純一にとっ
ては致命傷だった。
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「っ！　しまった！」

　ゾンビの一体が、純一の前まで腕を伸ばして迫ってきて
いた。

　――もうダメだ
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　だがその刹那、目の前のゾンビが吹っ飛ぶ。

「っ、なんだ？！」

　間髪をいれず、純一を囲んでいたゾンビたちは同じよう
に次々と倒されていく。
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「……一体誰が？」

　純一は当然の疑問を口にする。
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「はっはっは、折角救ってやったのに“誰呼ばわり”とは
　ごあいさつではないか」

「……お前！」
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「随分と腕が鈍ったようだな？　Ｍｙ同志」

　場違いに爽やかな笑顔を浮かべた杉並が純一の前に姿を
現したのだった。
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「お前、無事だったんだな……いや、まあ当然か」

　ひとまず、安全と思われるビルの中に避難したところで、
純一が口を開く。
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「ところで、俺の他にも生き残りはいるのか？」

　今一番確認したいのはそれだ。

「生きているも何も、そもそもこの世界にいるのは俺とお
　前だけだぞ？」
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　なにをいっているんだ、といった様子で杉並は言っての
ける。

「え？　なにそれ気持ち悪い」

　よくわからないが、杉並とアダムとイブなぞご免である。
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「はあ……なにを勘違いしているのか知らんが、この俺が
　お前にもわかるように現状を説明してやろう」

　じとーっとした目のまま、杉並は懐から長方形の液晶ディ
スプレイを取り出す。
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「大佐の情報によると、この世界は某教授が現実世界を侵
　食した結果、発生した亜空間らしいのだ」

「はあ？　なんだそれ」

　今度は純一の方が呆れ顔になる。
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　ツッコミたいことが山ほどある。

　それに、某教授にゾンビ……いつもゲーセンでやってい
る“アレ”だろうか？
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「ええいっ、いちいちリアクションを挟むな、説明が滞る
　だろうが」

　再びディスプレイに目を落とすと、杉並は画面をスライ
ドさせる。
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「取り残された、というか巻き込まれたのは朝倉だけだ。
　幸い、この空間の脱出方法は判明している」

　杉並は脇においてあるガンに手をかける。

「まあだからこそ、こうして俺がお前を助けにこられたの
　だがな」
#NEXT

「へぇ……。で、脱出の方法は？」

　こんな所、さっさとオサラバできるならそれに越したこ
とはない。

　純一は食い入るように杉並の顔を覗き込む。
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「うむ。簡単に言うとな、この世界を“クリア”すること
　だ」

　本当に簡単そうに、杉並は即答する。
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「え……？　抜け穴があったりするわけじゃ、ないのか？」

　純一は、てっきりそれを利用して杉並はやってきたもの
だと思っていたのだ。

「……朝倉よ、この期に及んで世迷い言はよせ。俺は未来
　に生きる猫型ロボットじゃないんだぞ？」

　なぜか純一は杉並から憐れみの視線をもらう。
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「知ってるわ！」

　杉並からまともな回答が得られると思ったのが、やはり
間違いだった。
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「なんにしてもだ、教授の野望を砕かん限り、我々は元の
　世界には帰れんぞ？」

　つまり、逃げているだけでは終わらない、ということだ。

「……そうみたいだな」
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　純一は外を徘徊するゾンビの群れを見やる。

　普段なら“かったるい”で済ませる杉並の話だが、こう
して実体験している以上否定もできない。
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「で？　俺はどうしたらいいんだ」

　甚だ不本意ながら、純一は目の前の現実を受け入れるこ
とにした。

「ふっ、さすがは我が同志、そうこなくてはな」
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　杉並はなぜか嬉しそうにニカニカとした笑みを浮かべる
と、どこからかアタッシュケースを取り出す。

「なんだよそれ？」

「うむ、いくらお前でもステゴロでいくには厳しかろう？」

　杉並はやたらゴテゴテした銃を取り出すと、純一に手渡
す。
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「……なあ、これすっげえ見覚えあんだけど」

　どこかで、というかゲーセンでお馴染みの“ガン”にし
か見えない。

「オマケにお前とオソロなのな」

　色違いなのは同じ筐体での協力プレイからきていたりす
るのだろうか？
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「朝倉よ、贅沢を言うな。我々は朝倉妹のように時空の断
　層は扱えんし、水越のようなパンチ力もない。当然の帰
　着だ」

「さいですか……」

　力説する杉並に、純一はツッコミを放棄する。
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「ああ、そうだ。言っておくが、武器は装備しないと効果
　は無いぞ？」

「わぁーってるよ！」

　幸い、というかやっぱりなのだが、いつもゲーセンで振
り回しているガンと使い勝手は変わらないようだ。
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「ではいくかＭｙ同志・朝倉、世界を救いに」

「ええ……そんなに重い話だったっけ？」

　装備を整えたふたりは、いよいよ本格的にこの世界から
の脱出――もとい“攻略”を開始した。
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「ほお……やるではないか、朝倉」

　弾倉を交換しながら杉並が不敵に笑う。
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「ふんっ、……お前もな」

　純一も同じように弾倉を換えながら鼻を鳴らす。
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　最初は戸惑ったこの脱出行も、勝手がわかってしまえば
慣れ親しんだゲーセンでの１プレイとそう変わらない。

　ムダに息の合ったふたりはゾンビステージを難なくクリ
アし、続いて得物を持って行く手を阻むギャングたちもあっ
さりと蹴散らした。
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　そしてふたりは、『最終ステージ』と書かれたゲートの
前まで来ていた。

「……ってかなんで書いてあんだよ？！」

　運動会の入場門のような造りが妙な哀愁を誘っている。
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「ふむ、プレイヤーに配慮した結果だろうな。教授も人の
　子ということだ」

「んなとこに配慮なんかいらねーよ」

　納得顔でメモをとる杉並は放置して、純一は先に進むこ
とにする。
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　しかしゲートを越えた途端、純一の足元を銃弾が穿つ。

「うおっ！　っぶねえ……」

　飛び退った純一が銃声のした方を見ると、物陰でギャン
グの格好をしたゾンビが得物を構えていた。
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「ここにきて新種のクリーチャーとは、やるな」

　まるで他人事のように杉並が頷く。
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「ん？　いや待て、あの動きは……」

　純一はクリーチャーの動きに目を凝らす。

　姿形こそ違うが、巡回のパターンがギャングの時と同じ
だ。
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「もしかして、使い回し……？」

「どうやら、不況の波はこの世界にも押し寄せたらしいな。
　これも“大人の都合”というやつだろう」

「いや、単なる手抜きじゃねーか？」
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「だが、動きのパターンが同じなら好都合ではないか？」

　杉並が軽く目配せをする。

「ああ、そうだなっ！」
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　ふたりは阿吽の呼吸でゲートを通過すると、素早く物陰
に隠れる。

　一拍遅れて、ふたりが通ったところを銃弾の雨がなめて
いく。
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「コイツら……意外と強いぞ」

　純一が顔を出した途端、鼻っ先を弾丸がかすめる。

「っち、オマケにあのゾビギャン、倒しても倒しても起
　き上がってくるではないか」

　数体のゾンビギャング――通称ゾビギャンに銃弾を命中
させた杉並が苛立たしげに舌打ちする。
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「なあ、こういう時のお約束って」

「うむ、いるだろうな“ボスキャラ”が」

　ふたりは射線ギリギリのところから顔を出す。
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　お約束通り、ゾビギャンの壁の向こうに一体だけ雰囲気
の違う個体が大仰に座っている。

「アレを倒さんことには埒が明かんだろうな」

「そうだな。で、作戦はどうする」
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　物陰に引っ込んだふたりは、早速顔を突き合わせる。

「では朝倉、お前がゾビギャンを引きつけてくれ。ボスは
　俺が倒す」

「あ、きたねーぞ！　俺に囮になれってのか」
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「誤解するな、これは適材適所だ。反射神経の良いお前が
　多数を担当し、精度に優れる俺がボスをスナイプするの
　が筋だろう」

「……わかったよ。かったるいけど、やってやるぜ」

　なんだか杉並に上手く乗せられた気がするが、今は置い
ておこう。
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「よし、ではタイミングはお前に合わせる。頼むぞ、我が
　同志」

「おう、任せとけ」

　ガンの残弾を確認して、純一は位置につく。
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「ふう……。よしっ、今だ！」

　後ろ足に力を込めて、純一は飛び出す。

　ゾビギャンの攻撃は当然純一に集中する。
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　だが純一はそれには構わない。

　作戦通りだ。

「どりゃぁあああ！」

　背後の杉並が照準を定めるのをなんとなく感じながら、
純一はゾビギャンを薙ぎ倒していく。
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　そしてできた、ゾビギャンの壁の僅かな隙間。

「アディオス、朝倉。これで勝利は我らのモノだッ！」

　それを杉並は見逃さなかった。
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　特徴的な銃声の後、ボスに決まった見事なヘッドショッ
トのエフェクト。

　時を同じくして消えるゾビギャンと鳴り出すマヌケなファ
ンファーレ。
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「やったな、杉並！」

　どうやら、“クリア”したらしい。

「ああ、我ながら会心の一撃だった」
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　歩み寄るふたりはお互いに右の拳を伸ばす。

　勝利を祝うグータッチ。

　拳を重ねようとしたその瞬間――不意に純一の視界の端
がキラリと光った気がした。
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「どわあっ！」

　それを確認しようとした純一の身体は何故か後ろに吹っ
飛ばされる。

　同時に、反響した銃声が純一の耳に届く――
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「……なんだ？　って、おい！　どうしたんだ？！」

　純一が起き上がると、目の前で杉並が倒れていた。
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　慌てて抱き起こすが、杉並の胸には真っ赤な銃痕。

「くそっ、撃たれたのか！　でも、なんで？　クリアした
　はずじゃ？」
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　純一はすぐに杉並の身体を路地裏へと引っ張り込む。

「くっ……しく、じったか。おのれ、世界の修正力め……」

「いいからしゃべるな！　黙ってろ」
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　純一は失血を止めようと必死に杉並の左胸を押さえるが、
赤い染みはみるみる広がっていく。

「そんな……ウソだろ？　だって、ほら……ゲームじゃね
　えか」

　徐々に熱を失っていく杉並に、純一の声が震える。
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「あ、あさくら……いいかよく聞け」

　口の端に血を滲ませながら、杉並は純一の制服を掴む。
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「俺が、死んでも……代わりはいる」

「こんな時までふざけるなよ……。俺にとってのお前は、
　ただひとりだぞっ！」

　純一は溢れそうになる涙を必死に堪える。
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「ふっ、そうか……」

　杉並の表情がふいに柔らかなものになる。
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「案ずるな、俺はいつでも……――」

　パタリと純一の制服を掴んでいた杉並の手が地面に投げ
出される。
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「おいッ！　しっかりしろ！」

　杉並は冷たい身体のまま、身動きひとつせず、目を閉じ
ている。
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「すぎなみぃぃぃいいいい！！」

　雄たけびを上げた純一の視界は、唐突に真っ暗になった。
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「――同志よ……、お前の目覚める時が来た」

　誰かに身体を揺さぶられている。
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「目を覚ませ、この世界にはお前が必要だ。さあ、起きる
　のだ――」

「……フガッ！？」
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　ガタッと純一は身体を起こす。

「ん？　……んんっ？！」

　純一が周囲を見回すと、そこはいつもの教室。
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　ただし、授業はとっくに終わっているようだ。

「ご機嫌麗しゅう……と言うにはだいぶうなされていたよ
　うだが、大丈夫か？　朝倉」

「っ！　杉並……？」
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　目の前にはいつも通りの飄々とした杉並が立っている。

「どうした？　俺の顔になにか付いているのか？」

「い、いや、なんでもねえよ」

　純一はペチペチと自分の頬を叩く。
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「まったく……ワケのわからん夢を見たぜ」

　もしかして、ゲームのやり過ぎかもしれない。
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「ふむ……、その実にマヌケな顔から察するに、ゾンビゲー
　でも脳内再生していたんだろうな」

　杉並は顎に手を当てて、真顔でそう口にした。

「え？」
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　普段なら『誰がマヌケだ！』とツッコミをいれるところ
なのだが、あまりの図星っぷりに純一は言葉を失う。
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「オマケに、さっきのお前のリアクション、どうやらその
　世界での俺はヘマをやらかしたらしい。……まったく、
　同志と行動を共にしながら情けないヤツだ」

　――どうして杉並が夢の内容を？
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「な、なんでそんなことがわかるんだよ？」

　純一は辛うじて、言葉を絞り出す。
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「我々は熱い友情で結ばれた同志だぞ？　たとえ火の中水
　の中ソビギャンの中、お前の行動を知ることなど造作も
　ない」

　コイツはエスパーだろうか？

　まるで、今さっきまでの夢の中の杉並から記憶を引き継
いだかのような口ぶりだ。
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「お前、まさか２人目……じゃないよな？」

　純一は冗談っぽく、その実予感めいたものを込めて訊い
てみる。
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「何を言っているのだ？　朝倉よ」

　心外だ、とばかりに両手を広げる杉並。

「あ、やっぱり……？」
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「うむ。俺は、“３人目”だ」

　ニヤリ、と杉並は微笑む。
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「えっとそれは……俺を起こしに来た人数、だよな？」

　純一は自分を起こしてくれそうな人の顔を思い浮かべる。

「はっはっは、それはな」

「そ、それは？」
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「トップシークレットだ」

　カッカと笑う杉並は、純一の肩をポンと叩く。
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「ああそれと、“夢オチ”というのは必ずしもファンタジー
　の類ではない。お前も用心することだ」

　爽やかな杉並の笑顔に、何故か純一は背筋が冷たくなる
のを感じたのだった。
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　――Ｆｉｎ
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